
ZBrush User Interview: Studio Linda 3DCGデザインスタジオで動物の制作を得意とし、様々な国内・外の広告やVFXを担当されてきたStudio LiNDA様にインタビューする機会をいただきました!
Maxon 成川:
この度はインタビューにお答えいただきありがとうございます!
Studio LiNDA:
桑原です。 この度は貴重な機会をいただきありがとうございます。 インタビューに返答させていただきます。
Maxon 成川:
御社の普段の業務内容や、今回紹介していただく作品をご紹介いただけますか?


ゼニガメ/Original
担当:森野
コメント:LiNDAオリジナル/オリジナル動物としてゼニガメと呼ばれるクサガメの赤ちゃんを担当しました。
近距離でも破綻しない想定だったので、ディテール作成には苦労しましたが、ZBrushの機能やアナトミーなど学んだことが多かったです。


カワウソ/TVCM
日清紡ホールディングス株式会社/歌おう!ニッシンボー「カワウソ」 篇
担当:井上
コメント:日清紡CM/日清紡のキャラクターです。ZBrush、Yetiで作成した女性ブルースシンガーを想定したカワウソです。


クオッカ/TVCM
日清紡ホールディングス株式会社/歌おう!ニッシンボー「クオッカ」 篇
担当:井上
コメント:日清紡CM/日清紡のキャラクターです。ZBrush、Yetiで作成した80年代アイドル歌手を想定したクオッカです。


ハシビロコウ/TVCM
日清紡ホールディングス株式会社/歌おう!ニッシンボー「ハシビロコウ」 篇
担当:森野
コメント:日清紡CM/日清紡のキャラクターです。ZBrush、Yetiで作成しており、
かわいさもありながら大御所歌手のような威厳のある顔つきを目指しました。
顔がアップで映る想定でしたので、くちばしや目の周りなどはZBrushの
GeometryHD機能を使って細かな詳細までスカルプトを行いました。

ハゲワシ/Original
担当:井上
コメント:LiNDAオリジナル/社内のHoudniBros.のアーティスト(羽毛レンダリング)と一緒に作業したレアケースでした。


アフリカゾウ/Original
担当:井上
コメント:LiNDAオリジナル/初めてZBrushを触り、試行錯誤しながらブラッシュアップした思い出あるキャラクターです。

ホワイトタイガー/TVCM
VT COSMETICS/「Village Town 北村の匠海」 篇
担当:北田
コメント:TVCMで制作しました。実在しないかわいい個体を目指してディレクションしました。良い着地ができたと思います。
北田:CGディレクター/社内外の品質管理がお仕事です。実写からフルCGまで幅広く制作しています。
井上:ARTディレクター/2008年LiNDA入社。実写系CM映画のVFXのディレクション、モデリング、コンポジットをしています。
橋本:アニメーター兼リガー/2005年にLiNDA入社。CG映画、実写映画、ゲームムービー、CMなど様々なジャンルのアニメーションやリグ制作を行ってきました。
森野:モデラー/大阪出身、2021年LiNDA入社。キャラクターのモデリングからグルーミング、背景、プロップなど様々なものを作っています。
Maxon 成川:
LiNDA ZOOというデジタル動物シリーズを制作していますが、今まで制作してきた動物の種類は何種類程度でしょうか?
Studio LiNDA:
これまでに映画やCMなどで約50種類の動物を制作してきました。
Maxon 成川:
デジタル動物プロダクションという業態になった経緯などをお聞かせください。
Studio LiNDA:
LiNDAはもともとフォトリアルなVFXが得意なプロダクションという位置づけで認知されていたと思います。
7年ほど前に、LiNDAにユニークな強みが欲しいということでメンバーと話し合いました。
当時、CMで制作することの多かった動物に特化すること選択し、デジタル動物プロダクション「LiNDAZOO」を立ち上げました。
動物は撮影がなかなか大変なので、貢献できる機会があると考えました。
同時期に同じ理由で「HoudiniBros.」という水の表現やFXなどに特化したチームも発足しました。
Maxon 成川:
クライアントからよく依頼される動物はありますか?
Studio LiNDA:
撮影が難しい危険動物(虎やライオン)や鳥などを依頼されることが多いです。
Maxon 成川:
普段の作業(デザインからモデリング~コンポジットまで)のワークフローを教えてください。
Studio LiNDA:
以下、簡単な流れになります。
- リファレンス
ゴールに近いリファレンス探しをします。
ネットで画像や動画を検索、動物園などに行き実際にリファレンス撮影を行ったりします。 - モデリング
形状作成、リトポ、UV作成 ZBrush ⇔ Maya の流れを繰り返して精度を上げていきます。
テクスチャ作成は主にMariやSubstance等の3DPainterを使用します。
Mayaでレンダリングしますが、制作内容により、レンダラーはRedshiftかArnoldを選択します。
質感、形状などの確認のためにターンテーブルを作成します。
その際に複数のHDRI(晴れ曇り室内などの環境の違うライティング)を使用します。
モデルがfixしたら、リグ、アニメーション作成の為、アニメーターに問題がないか確認してもらいます。 - セットアップ
モデラーからモデルを貰いMayaのmGearプラグインを使用してリギングしていきます。
モデルはアップデートが入る事が多いのでリグのビルドを何度もやり直せるようにセットアップはスクリプト化しておきます。 - アニメーション
動物案件は写実的なアニメーションを求められる事が多いのでYoutubeなどの動画リファレンスを参考にアニメーション制作を行っていきます。
完成したアニメーションはAlembic形式で後工程に出力してきます。 - 毛や脂肪のシュミレーション
Alembicで出力されたアニメーションを使って毛や皮膚のシュミレーションを行っています。
毛のシュミレーションはHoudiniVellum、Yeti標準シム、nHairを使い分けてシュミレーションを行います。
皮膚や脂肪の揺れに関してはHoudiniVellum、ZivaVFX、nClothを使用していきます。 - コンポジット
撮影時のHDRIを調整し、アニメーションをレンダリングします。
Nukeでコンポジットして、納品になります。
Maxon 成川:
3DCGを制作している人は、動物の毛並みや、鱗などの細かな情報にフォーカスしがちですが、リアルな表現する際に、どのような点を意識して制作していますか?
Studio LiNDA:
大きなシルエットを最も意識していると思います。形があっていないとディテールをいくら細かく入れてもリアルにはならないので。
そして目と口などカメラに近くて少し変わるだけで違和感を感じてしまうような部位も気を付けて質感付けしています。
Maxon 成川:
動物それぞれでキャラクターやバックグラウンドストーリーを割り当て、特徴を付けるということはされていますか?きっと、この子は缶詰の好みがはっきりと分かれていてめっちゃグルメだ。など。
Studio LiNDA:
私たち自身が動物にキャラクターを与える機会はあまりありません。
日清紡という会社の「歌おう!ニッシンボー」というシリーズでは、クライアントの意向を受けて
擬人化された情感豊かな動物たちの制作にチャレンジしています。
Maxon 成川:
アーティストが家でペットを飼っていると、動物の造形が上手いなどはありますか?
Studio LiNDA:
常に近くで見ることができるので、違和感に気付きやすいかもしれません。
犬を飼っているスタッフに聞くと鼻の動きなどは多くの動物のアニメーションに応用できるとのことなので、
造形でも鼻の凹凸感や皮膚など、実際に見たほうが制作にも活きてくると思います。
Maxon 成川:
ZBrushは普段制作中どの工程で使われていますか?
Studio LiNDA:
素体作成からテクスチャ&ディテールとブレンドシェイプなどの作業で使用しています。
Maxon 成川:
普段使用しているZBrush機能の中で、一番お気に入りの機能はなんでしょうか?
Studio LiNDA:
Zリメッシャー機能です。
Zリメッシャーのリトポ性能は他のソフトにはない扱いやすさがあります。ZRemesherGuideBrushである程度指定できるのも助かっています。
Maxon 成川:
紹介できるZBrushのTipsはありますか?
Studio LiNDA:
レイヤー機能を使用すると、モデルの部位やディテールの種類で作業を分けることができるので、後からスカルプトの強弱を調整できてとても便利です。
Maxon 成川:
動物など実在するものを制作する場合、リファレンスや参考資料に苦労すると思いますが、どのような集め方をしていますか?
Studio LiNDA:
生態とアナトミーなどの専門書やネット画像の他にYoutubeの4k8kの動物の動画も参考にしています(NationalGeographic、BBC Earthなど)
Maxon 成川:
チーム内でZBrushの機能を学ぶ際に利用しているサイトや本などはありますか?おすすめはありますか?
Studio LiNDA:
Pixologic Youtube Channelはもちろん、ZBrush CentralのQ&Aや、個人の方のTipsブログなどもよく参考にさせていただいています。
Maxon 成川:
好みのブラシはありますか?もしよろしければ好きなブラシTOP5を聞かせてください。
Studio LiNDA:
基本的なものになりますが、
1. ClayBuildup
2. Crease
3. Move
4. Damstandard
5. Inflate
です。
Maxon 成川:
Redshiftをレンダリングツールとして使用しているようですが、どのような点が気に入っていますか?また、好みの機能などはありますか?
Studio LiNDA:
レンダリングスピードが速いので、毛が生えた動物が大量に出るプロジェクトなどで使っています。
Maxon 成川:
人間の造形と違い、動物ごとに骨格や構造が異なるため、1種類の動物を作った後に、別の種類の動物を作った際にそれぞれの骨格に引っ張られたりしませんか?猫を作ったはずなのに人間みたいに肩が広い等。
Studio LiNDA:
アナトミー資料をそろえて、なるべく忠実に制作しているので引っ張られることはあまりないかもしれません。
Maxon 成川:
希少な動物であればあるほど資料が少ないため制作難しいと思いますが、制作に苦労した思い出深い動物などはありますか?
Studio LiNDA:
ヤンバルクイナ 資料が少なかったためチームで沖縄まで取材にいきました。野生のヤンバルクイナにも出会えました。
Maxon 成川:
ものすごく気になっているのですが、動物園に行くチケット代は経費に入りますか?
Studio LiNDA:
勤務時間内に取材として行くので、チケット代と交通費は支給されます。ヤンバルクイナの沖縄取材も経費です。
Maxon 成川:
ZBrushや、3DCGを始めたての方にアドバイスなどはありますか?
Studio LiNDA:
好きなものをとにかく作ってください!
Maxon 成川:
アーティストを採用する際に意識してみているポートフォリオの内容はありますか?
Studio LiNDA:
造形力など一つでも突き抜けている部分がある人は目に止まりやすいです。
Maxon 成川:
将来的に作りたいモデルや動物などはありますか?
Studio LiNDA:
フォトリアルな架空のキャラクター、動物なども作っていきたいです。
Maxon 成川:
何かその他告知したい内容などがあればお知らせください。
Studio LiNDA:
わたしたちLiNDAは株式会社グリオグルーヴの中のCG制作チームです。
動物やFXに限らず、CG全般の制作が可能です。
弊社には主に下記のチームが存在します。
LiNDA LiNDAZOO、HoudiniBros.を擁するCGプロダクション。VFX、フルCG映像を制作しています。
Animaroid 多岐にわたるツールを使いこなすフルCG専門チーム。主にゲームやアニメなどの映像を制作しています。
IBUKI 常設のモーションキャプチャースタジオ。ゲームやVtuber、MVなどに利用されています。
LiNDA
ウェブサイト : https://www.studiolinda.com/
Twitter : https://twitter.com/CGStudio_LiNDA
GriotGroove : https://www.griotgroove.com/
Maxon 成川:
貴重なお話ありがとうございました!